愛する福音派のみなさんへ
発起人 大頭眞一・久保木聡
賛同人 藤本満・水谷潔・西原智彦・岡谷和作・中村佐知
みなさま、私たちは立場も考えもそれぞれかなり異なる者たちです。けれども現在の状況に、みなさんと同じように心を痛めています。そこで、サードパーティーとして、なんらかの役割を果たしたいと名乗りを上げるものです。ドリームパーティーと称するのは、もちろん、キング牧師の I have a dream を想起してのことです。できるだけ多くの福音派のかたがたとともに歩みたいとの願いを込めました。
当事者また支援者のかたがたへ
まずは悔い改めさせてください。
私たち福音派は、十九世紀自由主義神学への反動という出自をもつため、聖書を大切に、真理を曲げないように、と歩んできました。けれどもその過程で、目の前におられるあなたがたを傷つけ、ときには取り返しのつかない結果をもたらしてしまったこともありました。心からお詫びいたします。
もちろん福音派の全員を私たちが代表しているわけではありません。けれどもこの私たちが一致できることがらなら、そうとうの福音派が賛成してくださると思うのです。
私たちは次のことを悔い改めます。
a. 存在を否定する言動の悔い改め
単純化した言動によって、性的少数者の存在を否定してきたこと。「LGBTQ+ 賛成・反対」、「LGBTQ+ は罪」等々。すべての人は神のかたちに創造された大切な存在。イエス・キリストを信じた者は誰でも神の子ども、神の民である。
b. 理想的家族像を過度に強調した悔い改め
単純化した言動によって、理想的家族構成がかなわない存在への配慮がなかったこと。「結婚こそ祝福された人生」「父の日、母の日」「子どもが与えられる祝福」等々。
c. 情欲に溺れる人たちと一括りにした悔い改め
性的な多数者であろうが少数者であろうが、自己中心で欲と快楽に溺れることはすべて性的罪であるのに、少数派であればみな情欲に溺れているかのような言動をしたこと。
d. 数ある罪の中でことさらに強調した悔い改め
盗み、殺人、貪欲、よこしま、欺き、ねたみ、そしり、高ぶり、偶像礼拝、酒に酔う、略奪といった多くの罪がある中で、性的少数者の性的罪をことさらに強調したこと。
e. すべての人が性的な罪を犯しうることを正しく表現してこなかった悔い改め
性が祝福であるにもかかわらず、それを大切にできないゆえに、すべての人が性的な罪を犯しうることを正しく表現せず、多数者にも少数者にも混乱を与えたこと。
f. 性に関するキリストのあがないを正しく表現してこなかった悔い改め
真理を語ることを恐れたため、多数者、少数者にかかわらずすべての性的罪をあがなってくださる主イエス・キリストを語らず、多数者にも少数者にも混乱を与えたこと。
g. 教会の働きと社会の働きを混同した悔い改め
聖書の倫理観を法の力にも敷衍して、社会的な差別を行ったこと。ソドミー法など。
h. 良心の自由に土足で踏み込んだ悔い改め
当事者の同意なく、性的関心、性的指向、性自認、性行為に関する個人情報を暴露したこと。多数者による少数者の暴露、そして信仰的立場の暴露。
その上でお願いがあるのです。それは、私たちがみなさんを傷つけようとしている怪物ではない、ということをわかっていただきたいのです。私たちには傾向として変化を恐れるところがあります。恐れというのでなければ、変化にとても慎重なのです。それが教会を守ってきたことも確かにあります。
私たちの大きな欠点は、想像する力と行動力とコミュニケーション能力の不足かも知れません。みなさんの怖さや痛みを想像できず、出て行ってみなさんの痛みに耳を傾けようとせず、みなさんから語りかけてくださったときも、その真意を聴き取る能力がありませんでした。とても、残念に、また申し訳なく思っています。どうか、もう一度私たちを信頼してください。いっしょに歩き始めるチャンスを与えていただきたいのです。
保守的なかたがたに
私たちのルーツはみな、福音派保守です。私たちはなんといっても皆さんといるのが一番くつろげます。もう、いちいち言葉に出さなくてもわかるピッタリ感があるのです。特にみなさんの救霊への情熱は特筆です。私たちも同じ情熱で走ってきたことを嬉しく思います。
けれどもこのピッタリ感が、暗黙のうちに異質なものへの拒絶反応の原因なのかもしれません。過去においても、聖書信仰問題などで、福音派の分裂の危機が起こってきました。
おそらくみなさんの、つまり、私たちの問題は、聖書を通して啓示された真理を、私たちが誤りなく理解できている、という前提にあるのでしょう。この場合、それぞれ真理を見出した者たちが、自分の正しさを証明し、他者の間違いを、これまた証明することに集中することになります。
しかし教会の歴史を振り返るならば、全てのことがらにおいて、ファイナルワードは、まだ発せられていないことは明らかです。啓示は完結していても、その解釈は進行中なのです。それぞれの解釈のちがいは、よりよい解釈のためのヒントとなりますから、論破や結論を急ぐのではなく、いっしょに考えていくうえでの思い巡らすべき大切な材料となります。
特に忘れてはならないのは、神学には生身の人間が関わっているということだと思います。特に、当事者が福音派である場合には、私たちのひとことは、人を活かしも殺しもします。彼らもまた、聖書に生きる民だからです。
致命的に重要な問題の場合は、結論を急がないで、数十年単位でいっしょに考えていくべきだと思います。みなさんは、そんなことをしている間に、教会は乱れてしまう、そういう危惧を持っておられると思います。けれども、いえ、だからこそ私たちはお願いしたいのです。当事者たちを信頼してほしいと。私たちはそれぞれに当事者と交わりを持ち、ときにはぶつかり合いながら、友だちになってきました。
マジョリティにも尊敬できる人もおり、深刻な問題を感じさせる人もいます。当事者についても同じです。どうかマイノリティの人々と直接に関わって、一人ひとりを知ってください。ただ、彼らはとても傷つきおそれています。私たちが立ち会わせていただくのがいいかもしれません。
すべての福音派の方がたへ
愛するみなさん。主イエスを愛するみなさん。私たちは涙ながらにお願いします。
おたがいを信頼してください。神の国を前進させましょう。福音派を見て、人びとが神の国とはどのようなところであるのかを知ることができるように。それはまさに、このたびのような危機のときにこそ、現れると思います。
私たちの提案は、次のとおりです
1. すぐに合意できないことがらは結論を急がないで、いっしょに考え、対話を続ける。そのためには、共同で研究会議を継続したいです。聖書解釈、医学、心理学、事例研究など、多岐にわたることでしょう。
2. すぐにしなければならないことは、教会生活を願う者は一人残らず、その願いがかなえられることです。そのためには、教会間のネットワークをつくり、その方にふさわしい教会をご案内することです。
3. これも急がれるのは、福音派の持ついのちの回復力を発揮することです。私たちは今回の危機を、福音派自身で乗り越えることができます。私たちはその夢のための第三極になりたいです。署名運動はしません。かわりにWEBサイトやズーム会議を通して、みなさんの声をお聞きしたいです。
【作成日:2022年9月3日】
発起人・賛同人

発起人:大頭眞一(おおずしんいち)
1960年神戸生まれ。北海道大学経済学部卒業後、三菱重工で十四年間原動機の営業に携わる。
退職し、英マンチェスターのナザレン神学校(BA,MA)関西聖書神学校で学び、日本イエス・キリスト教団香登教会を経て、現在京都信愛教会と明野キリスト教会牧師。関西聖書神学校講師。焚き火塾代表。

発起人:久保木聡(くぼきさとし)
1972年、福岡県生まれ。神戸大学経済学部卒、日本ナザレン神学校卒。2000年より日本ナザレン教団鹿児島キリスト教会牧師(現在に至る)。
オカリナ奏者であるとともに、非暴力コミュニケーションに基づいた対話や調停の実践をシェアしている。その働きの一部は著書『オカリナ牧師の聖書ゆるり散歩』(いのちのことば社)にて紹介されている。

賛同人:藤本満(ふじもとみつる)
インマヌエル高津教会牧師

賛同人:水谷潔(みずたにきよし)
日本福音キリスト教会連合(JECA)春日井聖書教会・協力牧師
キリスト教性教育研究会・会長

賛同人:西原智彦(にしはらともひこ)
1972年、広島県出身。上京後、20歳の時クリスチャンになる。ロボットが大好きで東京工業大学・大学院で学んだ後、牧師の道へ。
日本バプテスト聖書神学校四年課程卒。Baptist Bible Theological Seminaryより牧会修士(M.Div)授与。調布市、静岡市にて伝道者として経験を積み、八王子聖書バプテスト教会の牧師就任。

賛同人:岡谷和作(おかやかずさ)
1989年生まれ。3年半楽天株式会社で営業として働いた後、聖契神学校で学びつつ2016年からキリスト者学生会(KGK)の主事、お茶の水クリスチャン・センター宣教部として奉仕。
その後2020年から米国に留学し現在トリニティ神学校修士課程在籍中。訳書に『赦された者として赦す』(日本キリスト教団出版局)『LGBTと聖書の福音』(いのちのことば社)

賛同人:中村佐知(なかむらさち)
キリスト教書翻訳者 霊的同伴者
エピスコパル教会(米国聖公会)信徒。
2022年9月9日より賛同人に加わる。
Zoomミーティング
10時ダヨ、ドリパの忘年会!
2022年12月30日(金)22時~24時
ズームでどなたでも!
https://us02web.zoom.us/j/8040275290
(主な内容)
・藤本満と大坂太郎と語る
・藤本満と西原智彦と語る
・久保木聡、みなみななみと語る
・ドリパ音頭お披露目
・大頭眞一とアライの新井語る
・かな、久保木んぐと大頭眞一のミッドナイトトーク
・中村佐知姐さんの新刊紹介
・かなと西原智彦のみそかのカウントダウン など
性理解のためのブックレット読書会
約束の虹ミニストリーがエメル出版より出した『なんで教会がツライのか 考えたら出来た性理解のためのブックレット』の読書会(2022年11月25日開催:ドリームパーティーと約束の虹ミニストリーの共催イベント)を編集したものをYouTubeにアップしました。ぜひご覧ください。
【ナッシュビル声明ってなに?】
五年前に米国で発表されたナッシュビル声明が和訳され、大きな関心を集めています。
保守的なキリスト教神学者らが性自認・性指向等について記した、この14箇条の声明文に対して「賛成」「反対」の声があがり、ときに激しい意見交換がなされています。
ただもし、そもそも声明が何であるのかを理解していないのであれば、それは残念なことです。
声明が記された背景、そして声明の中身を、賛否に関わらず理解するための3回講座です。
【No.1】 10月14日(金)19時ー21時 目的と限界
講義動画はこちらで視聴できます(30分44秒)。
キリスト教には様々な声明文や信仰告白があり、それぞれに発表に至る物語があります。
ナッシュビル声明の発表にも、今から35年前にさかのぼる物語がありました。
どんな人達が、どんな背景の中で、どんな理由に押し出されて声明を発表したのか、その物語を理解します。
【No.2】 11月4日(金)19時ー21時 解説と評価
ナッシュビル声明の全14条はすべて「・・・であって・・・でない」という明快な文です。
しかし聖書通読において多くの人がレビ記でつまづくように、最初の数か条を読んだだけで理解を諦めてしまう人が多いのではないでしょうか。
(A)1~5条、(B)6条、(C)7~10条、(D)12~13条、という大区分があることを理解して全体像を俯瞰することで、声明文の意味を理解します。
【No.3】 12月2日(金)19時ー21時 神学的背景とその後
キリスト教会には、イエス・キリストを鮮やかに信じるように、罪の自己責任を明確にする傾向があります。
しかし、罪はすべて自己責任に転嫁できるのでしょうか。
ナッシュビル声明が語る罪を正しく見極め、その背後にある罪の神学を理解します。さらに、米国で声明発表から5年たった今、どのような動きがあるのか、岡谷和作さんからご紹介頂きます。(事前の申し込みは不要ですので、以下のズームURLに開催時間に入室ください。)
「焚き火牧師とにじいろの仲間たちinいのり☆フェスティバル2022京都」
ドリームパーティー発起人の焚き火牧師こと大頭眞一が、
いのフェス開催中の京都葵教会へ。
現地ルポやルカくん、かなさんへのインタビューなど。
10月15日(土)に取材し、YouTubeに公開しました!
これまでの経緯
キリスト教福音主義神学に立つ日本の諸教会にとって、ジェンダーとセクシュアリティは大きな課題の一つでした。性的マイノリティの方々に向きあって積極的に対応する教会がありました。対応するにふさわしい神学を見いだせず当事者に苦しみを与えてしまった教会もありました。また、関わりを一切もたなかった教会もありました。知らなかったのではありません。当事者、そして意見の異なる別の教会と向き合って対話をすることに消極的でした。
そのような中で、2022年7月14日に「性の聖書的理解ネットワーク」(以下、NBUS)がジェンダーとセクシュアリティに関する活動を開始しました。米国のThe Council of Biblical Manhood and Womanhood団体が2017年8月25日に発行したナッシュビル声明を和訳し、賛同者の署名活動を始めました。ここに至る約五年間、日本の諸教会はこの声明文の存在を知らなかったわけではありません。非公開の場で様々な教会、団体が独自に和訳し、学びの材料としていました。しかし、NBUSによって提示され、日本においても公に取り組むべき時が訪れました。
NBUSの行動は、ここに至る五年間の流れと繋がりの薄い提示のように思えます。それゆえ、性的少数者の当事者の方々をはじめ、長年当事者に寄り添う働きをされてきた諸教会から大きな反発が生じ、2022年8月18日に「性の聖書的理解ネットワーク『NBUS』を憂慮するキリスト者連絡会」が結成され、署名活動を始めました。この署名活動は福音主義神学の域を超え、大きなうねりとなりました。
両者の署名活動が続く中、残念ながら対話の試みがうまくいきませんでした。諸教会はその流れの中で、積極的にどちらかを支援する教会もあり、否定的に対応する教会もあり、また、傍観して信徒に委ねる教会もありました。
しかし2022年8月末、この膠着した状態に身を委ねることが、決して福音主義神学に立つ日本の諸教会にとって益とはならない、と私たちは考え、両者の間の道を模索し始めました。神学の詳細において違いはあっても、対話をやめてはならないと思います。また、福音主義神学の諸教会が当事者と関わることをやめてしまってはいけない、ましてやイエス・キリストを信じた当事者を、諸教会の連帯と補完的関係がないゆえに教会から放り出してはいけない、という強い危機感を覚え、不十分であっても行動を開始いたしました。
お問い合わせ
お問い合わせは、以下のメールアドレスにご連絡ください。
dreamparty.church@gmail.com